専業主婦のA子さんは、現在加入している生命保険の入院

専業主婦のA子さんは、現在加入している生命保険の入院通院特約が年内でなくなります。入院した場合、個室の差額ベッド代などの負担が大きくなるのでは、と心配しています。

 最近も友人が入院して個室で療養し、「医療保険から入院給付金が支給されたので助かった」という話を聞いたばかりでした。入院1日目から給付金が支給され、先進医療を受けた場合もカバーされる「よい保険」に加入したいと考えていました。

 しかし、「公的保障はかなり手厚いので、貯蓄をしておけば、医療保険に入る必要はほとんどない」と書いてある筆者の本を読み、本当なのかと相談に来ました。

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 ◇入院給付金の「期待値」はどれくらい?

 A子さんは現在、ご主人と2人で年金暮らしです。生活費はほぼ年金で賄えているため、約7700万円ある資産を取り崩す必要もありません。今後の大きな支出の予定は、息子が結婚するときの援助と、数回予定している海外旅行の費用でした。

 貯蓄が十分にあるA子さんが、新たに医療保険に入る必要はあるのでしょうか。結論から言うと、その必要はありません。医療保険から受け取れる入院給付金の期待値を考えてみれば明らかです。期待値は、掛け金に対して払い戻される見込みの金額で、確率の計算です。

 筆者が参加した保険の勉強会で示された資料を見てみます。資料は、「厚生労働省の患者調査(2014年)」と「総務省統計局の人口推計(14年10月1日時点)」のデータに基づき、作成者が独自の計算式で推計した「女性の1年あたりの入院率と1入院の平均日数」です。「年齢/1年あたりの入院率/1回の入院の平均日数」の順で表すと、以下のような結果でした。

 20代   9.6%   9.8日

 30代  11.7%  11.1日

 40代   5.8%  19.3日

 50代   7.6%  25.0日

 60代  11.9%  30.0日

 70代  21.3%  37.3日

 80代  34.6%  51.1日

 90代~ 47.5%  84.3日

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 68歳のA子さんが現時点で保険料の安い「終身医療保険」(入院給付金1日1万円、1入院あたり60日まで支給)に加入すると、保険料は月9210円(年11万520円)でした。A子さんが上の資料の通り、入院平均日数の30日間入院すれば、30万円の給付金を受け取れます。

 しかし、60代女性の1年あたりの入院率は11.9%ですから、30万円を受け取る可能性は相当低いでしょう。期待値を計算すると3万5700円(入院率11.9%×入院日数30日×入院日額1万円)でした。期待値で見ると、年間保険料は11万520円ですから、8万円近くの赤字です。

 ◇医療費が高くなっても高額療養費制度でカバー

 仮にA子さんが病気で入院しても、余裕のある貯蓄を取り崩して対応できます。健康保険による診療なら、医療費が高額になっても、「高額療養費制度」でカバーできます。

 高額療養費制度は、医療費の家計負担が重くならないよう、1カ月の医療費が上限額を超えた場合、超えた額を申請者が加入する健康保険組合などが支給します。月100万円の医療費がかかっても、70歳未満で現役なみの所得(所得区分年収約370万~770万円の人)であれば、自己負担は月額8万7430円です。

 治療が長引く場合は、直近12カ月に3回以上の高額療養費の支給を受けている場合(多数回該当者の場合)は、その月の負担の上限が4万4400円に下がります(2018年7月診療分まで)。

 このように公的保障には手厚い制度があります。十分な貯蓄がある場合は、「病気になったときのために」といった目的ごとにお金の使い道を分ける必要はないのです。貯蓄しているお金は、何にでも使うことができます。